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Aladdin's cock

日かげ いつか月かげとなり 木のかげ・・・山頭火       
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烏瓜の花と果実・・・

karasuurikarasuuri カラスウリの実はよく見かけるが、花はまだ観たことがない。赤い果実は・・・「あっ、こんなところにもあった・・・
karasuuriこんなところにも・・・」といった風に、想いもかけぬところで、いっぱいぶら下がっているのをよく眼にするのだが・・・恥ずかしながら、カラスウリの花を見ることがないワケが解ったのは、近年になってからのコトなのだ。カラスウリは何処にでもあり、誰しもが知っている赤い実からは、それ以上に深く好奇心を掻き立てられるようなコトがなかっただけのハナシ。あまり見ることのない花の生態については、図鑑なりネットを検索してみればすぐに解ることではあるけれど、検索を繰り返していたら、青空文庫に寺田寅彦の「烏瓜の花と蛾」という作品があり、そこには「烏瓜の花の生態」が見事に描写、表現されているので一部抜粋転載し、楽しませてもらった。

 この花は昼間はみんな莟つぼんでいる。それが小さな、可愛らしい、夏夜の妖精フェアリーの握にぎり拳こぶしとでも云った恰好をしている。夕方太陽が没してもまだ空のあかりが強い間はこの拳は堅くしっかりと握りしめられているが、ちょっと眼を放していてやや薄暗くなりかけた頃に見ると、もうすべての花は一遍に開き切っているのである。スウィッチを入れると数十の電燈が一度に灯ともると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって、それが光の加減で自働的に作用して一度に花を開かせるのではないかと思われるようである。ある日の暮方くれがた、時計を手にして花の咲くのを待っていた。縁側で新聞が読めるか読めないかというくらいの明るさの時刻が開花時で、開き始めから開き終りまでの時間の長さは五分と十分の間にある。つまり、十分前には一つも開いていなかったのが十分後にはことごとく満開しているのである。実に驚くべき現象である。

烏瓜の花は「花の骸骨がいこつ」とでも云った感じのするものである。遠くから見ると吉野紙よしのがみのようでもありまた一抹の煙のようでもある。手に取って見ると、白く柔らかく、少しの粘りと臭気のある繊維が、五葉の星形の弁の縁辺から放射し分岐して細かい網のように拡がっている。莟んでいるのを無理に指先でほごして開かせようとしても、この白い繊維は縮れ毛のように捲き縮んでいてなかなか思うようには延ばされない。強しいて延ばそうとすると千切ちぎれがちである。それが、空の光の照明度がある限界値に達すると、多分細胞組織内の水圧の高くなるためであろう、螺旋らせん状の縮みが伸びて、するすると一度にほごれ拡がるものと見える。それで烏瓜の花は、云わば一種の光度計フォトメーターのようなものである。人間が光度計を発明するよりもおそらく何万年前からこんなものが天然にあったのである。

烏瓜の花が大方開き切ってしまう頃になると、どこからともなく、ほとんど一斉に沢山の蛾がが飛んで来てこの花をせせって歩く。無線電話で召集でもされたかと思うように一時にあちらからもこちらからも飛んで来るのである。これもおそらく蛾が一種の光度計を所有しているためであろうが、それにしても何町何番地のどの家のどの部分に烏瓜の花が咲いているということを、前からちゃんと承知しており、またそこまでの通路をあらかじめすっかり研究しておいたかのように真一文字に飛んで来るのである。

光の加減で烏瓜の花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛も考えられる。鳳仙花ほうせんかの実が一定時間の後に独りではじける。あれと似たような武器も考えられるのである。しかし真似したくてもこれら植物の機巧はなかなか六かしくてよく分らない。人間の智慧はこんな些細ささいな植物にも及ばないのである。植物が見ても人間ほど愚鈍なものはないと思われるであろう



青空文庫【寺田寅彦「烏瓜の花と蛾」より抜粋】


◆寺田寅彦 烏瓜の花と蛾=青空文庫=
◆カラスウリ=観音崎の自然&あれこれ=







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